ヤマトの羽田クロノゲートがすごすぎた話
ヤマトグループ最大の物流施設、羽田クロノゲートへ見学にいってきた。
羽田クロノゲートとは
羽田クロノゲート とはヤマトグループの「バリューネットワーキング構想」の一大拠点だ。
「バリューネットワーキング構想」とは単なる物流にとどまらず、様々な付加価値を乗せてものを運んで行くという、ヤマトグループの新たな試みだ。
見学は無料
羽田クロノゲートは3年前にできた施設だが、日本最大の民間物流企業の最大拠点ということもあり、最先端の技術が揃っている。
そんな施設がホームページから無料見学の予約ができる。
実際土日は結構は早く埋まるため、早めに予約することをおすすめしたい。
見学内容
見学内容は以下だ
・ヤマトの宅急便とクロノゲートのコンセプト紹介
・物施設の見学(これが凄い)
・まとめ
とくに2つ目の物流施設の見学はメインコンテンツで、驚くべき仕掛けを目の当たりにすることができる。
例えば仕分け作業。
1時間48000もの荷物が無人でコンベアで運ばれる様は圧巻だ。
写真撮影ができないため伝えづらいが、コンベアにある1枚1枚のセルというパネルが、それぞれの荷物のデータを記録しており、それぞれの行き先に自動で振り分けていく。
どう考えたらこんなプログラムが組めるのか、、というくらいの恐ろしい光景だった。
何がすごいのか
ただ一般的な仕分け作業を理解するだけではクロノゲートに来る意味がない。
クロノゲートのすごいところはその仕組みにある。
例えばヤマトメンテナンスソリューションズの棟では家電修理を請け負う。
なんと羽田クロノゲート内に技術者がおり、そこでメンテナンスを行っているのだ。
何か家電を修理したい時、従来は
消費者→ヤマト→メーカー工場→ヤマト→消費者
という流れだったのが、
消費者→ヤマト→消費者
という形に短縮することができる。
その他にも例えばレンタル医療機器。
医療機器は手術ごとにレンタルされることが多い。
クロノゲートではその洗浄サービスも請け負っている。
とにかく物を運ぶ間に付加できる価値をどんどん付加していく。
それがバリューネットワーキングの構想だ。
その他にもPCのキッティングや、パンフレットの印刷サービスや在庫管理等、
とにかくあらゆるものの価値をつなげる場所になっている。
物流のプラットフォーム化
クロノゲートを見てもちろんその最先端の物流施設にも驚かされたが、物流の中で価値をどんどんつなげていこうというそのコンセプトに驚かされた。
まさに『プラットフォームブランディング』で出てくるような、プラットフォーム化されている恒例と言えよう。
ヤマト最大の資産である物流ネットワークを一種のプラットフォームだととらえ、その接点であらゆる価値を産んでいく。
机の上で会議しているだけでは絶対思いつかない発想。
無料なので、1度見学にいかれることをおすすめする。
プラットフォームブランディングーー1つの接点でいかに多くの価値を生み出すかー
最近話題の書を。
グロービスで教員をされている川上 慎市郎さんとインサイトフォースの山口義宏さんの共著。
ブランドとは何か、プラットフォームとは何か、そしてどのようにそれらを作り、顧客体験を最大化させるか。そのエッセンスが詰まった書である。
本来であればすべて読破して飲み込んでからブログに書いてみたかったが、
一番最初に目を通した第三章の「体験価値を共創するプラットフォーム」という部分が非常によくまとまっていて面白かったのでその部分に限ってまとめてみたい。
プラットフォームとは
本書は2013年4月に初版が発行された本である。
2013年といえばだいぶ昔に聞こえるが、9月にiPhone5sや5cが発売された年といえば、少しは最近に感じるだろうか。
当時から「プラットフォーム」という言葉はビジネスの世界ではよく耳にしていたが、具体例で言うとまさにiPhoneのiOSやiTunes、AmazonのAmazon.com等を創造すればわかりやすいだろう。
本書では2つ定義付けしている
・定義1:複数の用途・仕様の製品をより低コストで開発・生産することを狙いとした技術的な共通基盤
・定義2:ユーザとユーザーのコミュニケーションを媒介することで価値を生み出す場
定義1はどちらかという自動車産業等の製造業でよく言及される「プラットフォーム」の定義に近い、定義2は事業と事業と繋がりの場を社会的に共有し、そこに様々な企業が三角し、価値を生み出す場としての「プラットフォーム」である。
※上記は慶應義塾大学の国頷氏の『オープン・アーキテクチャ戦略』の中で説かれている
本書では定義2の「プラットフォーム」に基づいて、プラットフォームの機能が書かれている。
そして本書のタイトルが『プラットフォームブランディング』となっているように、ブランドの「体験価値」を最大限に伝えるための手法として「プラットフォーム」が描かれている。
プラットフォームの機能
本書ではプラットフォームの機能を以下の2つに分類している。
①コミュニケーションの低コストでの媒介
「コミュニケーション」というとわかりにくいが、これは「特定のユーザーとユーザーによる情報のやりとり」と言ってしまったほうがわかりやすいかもしれない。
Amazonや楽天であれば買う側の「発注」という情報、売り手の「受注」「納品」といった情報のやりとり。
プラットフォームを使えばその「接点」を統一できるため、低コストなコミュニケーションが実現可能となる
②相互ネットワーク効果による、売り手・買い手双方への価値創出
これもわかりにくいが、ひらたくいうと、「皆が同じプラットフォームを使うことで、買い手にも売り手にもメリットが出る」という話だ。
ECモールで言えば出店者が多ければ多いほど顧客はつくし、顧客は多ければ多いほど、出店者も増える。このような状態を相互ネットワークが築かれている状態と呼ぶ
ECモール以外だとLINEやInstagramのようなSNSも相互ネットワークが働いている。
皆が使っているからLINEですぐに誰とでも連絡を取れるし、誰かの近況をしることができる。
それをネットワーク外部性とも呼ぶがそれが作り出されたプラットフォームはユーザーとユーザーの価値をいつでもマッチングできる状態になる。
2点をまとめると、ユーザーとユーザーのニーズをマッチングさせ、統一された価値を生み出すために生み出された技術的な共通基盤がプラットフォームだと考える。
プラットフォーム化のための4ステップ
①生活者の感じている「大きな欠損・非効率」を発見する
②そこで感じている体験の価値を絞込み、最大化する
③体験価値を高めるためにパートナーを引き込む(=プラットフォーム化する)
④周辺領域へプラットフォームを拡大する
①・②に関してはプラットフォームに限った話ではなく、世の中に出すプロダクト一般的に言えることだ。
以下に顧客の困りごとを解決する価値を提供し、それを絞込み、最大化するということがプラットフォームにとっては重要であり不可欠な要素だという。
プラットフォーム特有の部分でいうと③・④のほうが重要だといえるだろう。
③体験価値を高めるためにパートナーを引き込む(=プラットフォーム化する)
ここがプラットフォームにとっては最も重要なポイントだろう。
プラットフォーム化するためにはそこに参加してくれるパートナーの存在が欠かせない。
④周辺領域へプラットフォームを拡大する
これはプラットフォームを作る上で一番むずかしい部分になりうる。
うまくパートナーを巻き込み、プラットフォーム上に価値を生み出してもらいながら、
プラットフォーム自体が拡大してその領域を担う必要がある。
それはプラットフォーム自体が常に「プラットフォームの包含」と呼ばれる、プラットフォーム自体が飲み込まれるというリスクと常に隣り合わせだからだ。
本書ではiOSが地図アプリを内省したことが結果的に良い選択だったということが書かれている。
まとめ プラットフォーム=相席屋?
詳しくは本書を読んでいただきたいが、私なりにまとめると
プラットフォーム=単一の接点で複数の価値を生み出すことのできる場所
だと思っている。
複数の価値というのは複数のニーズをマッチさせることだ。
1つの接点で1つの価値を生み出すだけではただの商取引である。
誰かが100円でパンを買っても、パンを売る側と買う側のニーズしか満たすことはできない。
そういう定義でいくと私なりに思いつくプラットフォームの例は「相席屋」だ。
男性が30分1500円の食べ飲み放題(店によって違うらしい)で入店し、無料で食べ飲み放題をしている女性の席に同席するという仕組みである。
女性は飲み会前の0次会や単なる無銭飲食として利用ができ、男性は話し相手を見つけることができるニーズのマッチングの場だ。
これはプラットフォームの定義①および②を確実に満たしているだろう。
ただこれだけだと1つの接点におい1つの価値しか生み出せていないが、この「相席屋」の仕組みはプラットフォームになりうる可能性を秘めている。
例えば相席屋がカップルを生み出すプラットフォームと定義づければそれにまつわる様々なパートナー企業を巻き込むことができる。旅行の広告を出したり、相席屋の次の店を提案したり。
コミュニケーションのプラットフォームであれば、来場者を趣味や属性で絞れば、趣味の友達が欲しいというニーズも産めることができる。
このようにプラットフォームは多くの可能性を秘めている。
常日頃ビジネスの仕組み作りを考えている人にはおすすめの1冊だ。
【備忘録】求められるのはニーズのマッチング
下記のイベントに参加してきた。
NPO法人難民支援協会(JAR)とブロガーであるちきりんが主催した、難民問題について考えるイベントだ。
たまたまちきりんのブログでこの告知をみて、興味本位で参加してみた。
ただのNPOイベントだとおもったのだが、"市場"について、"価値"とは何かに考えさせられる非常に意義深いイベントだった。
単なるNPOのイベントではない
NPO法人難民支援協会(JAR)というNPO法人が主催で難民について考えるイベントときいて想像するのはどういったイベントだろうか。
おそらくNPOの活動内容や、社会問題の背景を強く訴える勉強会系のイベントを想像する人が多いのではないだろうか。
しかし、今回のイベントはそうではなく、事前の知識や社会的な背景はちきりんのブログにある8回の連載を読むことでインプットし、事前の課題に皆で答えていくというイベントだった。
・事前情報
日本の難民認定基準、知ってます? - Chikirinの日記
難民ってどーやって日本に来るの? - Chikirinの日記
偽装難民についてはどう考えるべき? - Chikirinの日記
事前情報を受けて課題に答える
イベントは上記の連載を読んだ上で課題に答えてディスカッションしていく形式。
課題は以下の4つだ
(1) 個人/企業の寄付を増やすには?
(2) 難民支援に協力する企業を増やすには?
(3) 選挙権を持たない難民に代わって世論を盛り上げ政治家にプレッシャーを与えるには?
(4) 難民を受け入れる都市を増やすには?
上記のような課題を考える際、私のような凡人はすぐに具体的なアイデアを出さないと行けないと焦ってしまいブレストのように役に立たない考えを量産してしまう。
※ブレストにはそれに適した場面があるのは事実
ただ今回のイベントではそれぞれに求められる"価値"をベースにアイデアを考えるということが主眼に行われていた。
どんなターゲットにどんな価値を与えれば、(1)~(4)が実現できるか?
例えば(1)であれば単に寄付をお願いしても企業は寄付をしてくれない。
「寄付をすること」による価値を提供しなければならない。
例えば
・免税(これは既にある)
・寄付した企業の商品の一斉購買運動
→単なるブランド向上ではなく購買まで至る社会現象を生みたいと思っている企業に対してアプローチ
等、どんなターゲットが寄付をすることにどんな価値を見つけるかで、生まれるアイデアが変わってくる。
(2)の場合だと、
例えば難民の出身国に進出しようとしている企業に対して、難民を支援することで難民出身国の風土・ニーズがわかるという価値を提供し、企業協力を仰ぐ、という方法も考えられる。
(3)世論だと
新聞はネタが余っているため、ニーズはない。ネタを探しているところは?と考えると、ネット業界に有り余っているWebライターという選択肢にいきつく。
ライターとしての地位向上/スキルアップという価値を提供することで、世論喚起の協力を仰ぐことができる。
などなど、、自分ではアイデアベースのものしか思いつかなかったが、ちきりんファシリテートのもと、多種多様なアイデアに触れることができた。
そして良いアイデアに共通しているのは、協力する側と協力を頼む側のニーズが上手くマッチングしているということ。
「マーケット感覚」を身につける
ちきりんの著書『マーケット感覚を身に着けよう』では、「製品やサービスが誰にどんな価値を提供しているのか?」を考える力が重要であると説いている。
NPOで協力を仰ぐのでも同じで、自らのニーズを満たすには、それをしてもらうことでどんな価値を提供できるか?を考え抜くことが重要。
我々は普段市場に生きながらそういった視点はどうしても抜けてしまいがち。そういった意味では非常に有意義なイベントだった。
マーケット感覚を身につけよう---「これから何が売れるのか?」わかる人になる5つの方法
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