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イノベーションの権威が考える、企業戦略をキャリアに応用する理論

4月も半ばということでキャリアに関する本を1つ。

 

イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ

イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ

  • 作者: クレイトン・M・クリステンセン,ジェームズ・アルワース,カレン・ディロン,櫻井祐子
  • 出版社/メーカー: 翔泳社
  • 発売日: 2012/12/07
  • メディア: 単行本
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 破壊的イノベーション論やイノベーションのジレンマなどで有名なハーバード・ビジネススクールの人気教授、クリステンセンが人生における経営学を説いた一冊。

 

キャリアに理論を示す稀有な本

この本のユニークな点は、企業戦略の意思決定を例に、キャリアを歩む上で重要な理論を示している点だ。

キャリア本にあるのは、ある人物の成功を取り上げ、そんときに考えたことや、どうチャンスを活かしたかなどを並べ立てるというものだが、この本はそういったキャリア本とは一線を画す。

もちろんよくあるキャリア本も読めば勇気づけられたり、ためになったりするということは少なくない。実際そういう本の方が具体的で読者にとってはわかりやすかったりする。

しかし、読む人皆がそのような成功例と同じようなことが起きたり、人に出会ったりするわけではなく、時代によって、国によって、そういった成功をもたらす条件は変わってくるため、自分の人生、キャリアに応用するとなると難しくなることも多々ある。

本書の優れた点は、どのような時代、場所、地位の人にとっても普遍的で応用の効く「理論」を示している点だ。キャリアというものに理論を示した本は中々見つけられることはない。

 

意図的戦略は特定の状況でしか意味を成さない

キャリアについて考えるとき、実は多くの人が考えることができていないのではないかと感じるのがこの「意図的戦略」と「創発的戦略」の考え方だ。

意図的戦略とはキャリアで言えば綿密にねられた計画のことで、何かの節目に考えたりすることが多い。

創発的戦略は言ってみれば縁と運によるもので、予期していなかった機会を利用する戦略のことだ。

この2つの戦略の意味を理解することでキャリアの見え方が変わってくる。

最も重要な事は綿密にねられたキャリアプランというのは。特定の状況でしか意味を成さないということだ。そのプランはどの仮説が正しければ成立するのか、といことを考えるのは中々難しい。

しかも完璧な意図的戦略というのはめったにない。にもかかわらず、多くの人は年の始めや、節目節目に完璧な意図的戦略をつくろうとし、それができずにつまずいたりする。

意図的戦略が見つからない際に重要になってくるのが創発的戦略で、簡単にいうと人生でいろんな事を試せということで、一見自分には興味のないと思われるものに挑戦してみたり、多くの人に出会ってみたりすることで、戦略を修正していく。

そうした中で自分を本来的な意味で突き動かす内発的動機付けを見つけられることになる。そうすることでその状況状況にあった意図的戦略を作成できるようになる。

 

簡単にいえばこれは「キャリアについて考えすぎる前に動け」ということで、就職活動などでもよく言われることだ。だが、創発的戦略と意図的戦略のどちらかが大切ということではなく、自分がどのような戦略に基づいて今行動しているのかということを客観的にバランスよく見ていくことが必要になる。

 

目的に必要な3つのモノ

クリステンセン人生の目的を作るために必要なものとして、「自画像」「献身」「尺度」の3つをあげている。

自画像とは、簡単にいえばビジョンで、この時点で自分はこうありたいというもんで、献身はその自画像を信仰といえるくらい信じること。そして最後が、その進捗を図るための尺度だ。

 

この目的というものはかなり重要で、これらは意図的に作られるものでなければないという。そしてその目的に至る道は創発的であることが多い。そしてこの目的を発見するためには多くの時間がかかる。

人は創発的なプロセスと意図的なプロセスを往復しながら目的を見つけ、その目的に進んで歩みを進めている。

そのためにまず、自画像を描く、そしてそれを信じ、受け容れる。

簡単なことではないが、日々考え続けていかなければならない。