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東京モーターショー2015で感じた"モヤモヤ"―既存メーカーに"覚悟"はあるのか?―

10月30日より開幕している東京モーターショー2015へ行ってきた。

www.tokyo-motorshow.com

 

話題になっている通り、クールな自動車が多くのメーカーによって展示されており、概ね満足の展示会だった。

ただ、前回の東京モーターショー2013と比べると一種の"もやもや"というか、若干物足りないような感じがした。

今回はそのもやもやを雑感としてメモとして残しておく。

 

「自動運転×次世代エネルギー」という大テーマ

今回のモーターショーの大きなテーマは、現在自動車業界の話題を席巻している、「自動運転車」と、トヨタが開発した燃料電池車(HV)や、その他メーカーが出している電気自動車(EV)を始めたとして、ガソリン以外のエネルギーを動力とした次世代自動車だ。

 

現実化しつつある自動運転

特に、自動運転車については、Googleが2012年に開発して以来、既存の自動車メーカーだけではなく、Apple等のIT企業も参入しようとしている領域だ。

実際にアメリカやドイツでは公道での実証実験も行われており、日本でも先月、トヨタが公道での実証実験のレポートを公開している。

 

トヨタ、2020年頃の実用化を目指す自動運転車のデモ走行映像を公開 - Autoblog 日本版

 

元々、一昨年の東京モーターショー2013においても、自動運転という技術は大いに注目されており、スバルのアイサイトを始めとした自動ブレーキングシステム等は、かなり力を入れて展示されていた。

日産においては、実際に開発中の自動運転車も公開していた。

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東京モーターショー2013において公開されていた日産の自動運転車

 

しかし、2013年当時、自動運転車の実現を日本のメーカーが本気で考えていたのかというと、決して考えていなかったはずだ。

何より自動運転車の技術というのは既存の自動車メーカーを弱体化させるほどの破壊的な技術だからだ。

 

もし完全な自動運転技術が完成された世界を想定すると、その世界では事故が起きない。事故が起きなければ車の生産台数も大きく減るだろう。

また、自動運転なので、自分で車がを所有する形も必要なくなる。

公道に縦横無尽に走る車を適当にピックアップして搭乗し、仕事をしたり映画をみたりするだけで、目的地までついてくれる。

 

これまで、車というツールはライフスタイルに密接に関係し、ライフステージに併せてグレードの高い車を買うことがステータスであり、それが憧れだった。

しかし、自動運転が実現すればそういったことも必要なくなり、既存の自動車メーカーは大幅に縮小するだろう。

 

そういった事情もあり、2013年は夢のようなコンセプトとして展示していた自動運転も、今回の東京モーターショー2015では若干の現実味とともに、既存の自動車メーカーの心苦しい立場、迷いが感じられた。

 

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ベンツの自動運転車のコンセプト

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日産の自動運転コンセプト。実際にステージ上で走行

 

方向性の定まらない「次世代エネルギー」

もう1つのテーマである次世代エネルギーにおいても同様である。

EV,FCVを始めとした次世代エネルギー車は東京モーターショー2013においても展示されていた。

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東京モーターショー2013において展示された TOYOTA FCV CONCEPT

 

このFCVコンセプトはTOYOTA MIRAIとして発売され、今回のモーターショーにおいても展示されている。

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TOYOTA MIRAI

 

次世代エネルギーにおいても、自動運転車に対するメーカーの意識と同様の迷いが感じられる。

もともと自動車の技術はエンジンのすり合わせが肝であった。しかし電気自動車の世界になれば、既存の自動車メーカーである必要はなくなる。

実際テスラのようなメーカーが出現し、既存の自動車業界のパワーバランスを揺るがしている。

EVを開発するということは、自らの既存の技術を捨てるそれなりの"覚悟"が必要になるということだ。

 

しかし、今回のモーターショーでその覚悟を感じられたのは日産くらいだ。自動運転車においても、次世代エネルギーにおいても、日産にはそれ相応の覚悟が感じられる。

 

トヨタはどうか。

そしてEVに対抗しようとトヨタが押し出しているのが燃料電池車だ。

しかし、燃料電池車はEVと比べると水素ステーションの設置コスト等、多くの課題を抱えている。

しかし、今回の東京モーターショー2015を見る限りそれに対する答えは感じられなかった。

国ともども、見えない水素社会を盲信し、猛進しているようにすら見える。

 

既存メーカーの"覚悟"に期待

自動運転と、次世代エネルギー。

既存のメーカーが不要になるほどの破壊的なこの2つのキーワードは、向こう10年自動車業界を揺るがす大きなキーワードになるだろう。

日本メーカーのどれか1つでもそれに対する明確な覚悟をもった答えを用意してくれることを信じている。

 

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