『総理』を読んでー孤独な意思決定者ー
SNSのタイムラインで流れてきたので、SONY Readerで購入し一読。
著者の政治記者としての圧倒的な取材力、そして中心となる安倍晋三・菅義偉・麻生太郎の政治家としての凄みに驚かされた一冊だった。
第一次安倍政権の終わりから第二次安倍政権まで
本書はTBSのジャーナリストである山口氏が2000年に政治記者になってから見てきた安倍晋三の記録である。
第一次安倍政権が発足し、崩壊し、そして現在の安倍政権となり復活するまでの様子を、政治記者ならではの視点で書き抜いた一冊である。
そしてこれは決して安倍晋三・自民党政権を礼賛するものではないが、国家の総理とはどういうものなのか、どんな人が次の首相にふさわしいのか、といった問に対するヒントを、普段見ることのできない安倍晋三、麻生太郎の会話、人物像を通して教えてくれる。
一種の興奮すら覚える第二次安倍政権誕生
第二次安倍政権の誕生は自分の中でも印象に残っているため、本書を読み進めていくとその当時の興奮が手に取るようによみがえってくる。
2012年、鳩山、菅、野田と続いた民主党政権への国民の不満が臨界点にたったころ、自民党総裁選で安倍晋三が当選し、そして衆議院解散、新政権の誕生となった。
ちょうど夏の自民党総裁選の頃、自分は大学時代のインターンの関係で永田町にいた。
橋下徹率いる日本維新の会の誕生などで国会もうねりを上げており、ここから変革がはじまるというのを学生ながらに感じていたのを記憶している。
そして総裁選自体は石破茂との争いとなっており、国民の多くが注目していた。
そして安倍政権が誕生し、現在に至っているのだが、第一次安倍政権と第二次安倍政権の安倍晋三は別人かというくらい人柄が違う。
TPP,特定秘密保護法案、安保関連法案等、国民の反対が強い法案を見事に通して見せている。
そして2014年の衆議院解散や、オバマに「深い失望」と言わせた靖国参拝等、奇襲とも呼べる戦略で国民をある意味翻弄してきた。この安倍晋三の"巧さ"は第一次安倍政権の頃にはなかった。
また、それだけではなく、目下進行中の北方領土問題や、一応手を打った慰安婦問題、アメリカとのシリア空爆に関する駆け引きなど、これまでの日本にはなかった巧みな外交術も第二次安倍政権の特徴である。
そうした安倍晋三の一挙手一投足を、本書は記している。
政治とは何か、首相とはどういう存在か、そしてジャーナリズムとは。
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