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旅・書評・仕事

主体性と安心感を兼ね備えたチームビルディング教本

サイボウズ式編集長の藤村さんによる未来のチームの作り方。

《働きやすさ》を考える メディアが自ら実践する「未来のチーム」の作り方

《働きやすさ》を考える メディアが自ら実践する「未来のチーム」の作り方

少人数チームのリーダーによるリアルなマネジメント教本

世の中に「リーダーシップ」「マネジメント」を語る本は多く存在するが、 「はじめてマネージャーになる」「急にチームを持つことになったけどどうすればいいのかわからない」 といった人にとっては概論的すぎたり、悩む当事者の個性を無視してしまい、 リアルな場に落とし込まれていないケースが非常に多い。

しかし本書はサイボウズ式編集長となった当時の藤村さんが、どのように決意し、どのように壁に悩み、どのようにそれを乗り越えたか。その考え方からツールを利用した組織の在るべきの模索までが詳細に記されている。 少人数のチームを率いる多くのリーダーには学びになることが間違いない一冊。

以下、私が共感した部分を経験と交えて記載してみる。

3社を経験して気づく「情報のオープンさ」の重要性

私は社会人を5年目でありながら転職を2度経験している。既に3社も経験しているため、良い組織、悪い組織の特徴のようなものは肌で体感してきた。その中で「良いチームの共通点」と呼ぶべきものが、「組織内の情報へのアクセスのしやすさ」だと確信している。

情報にアクセスしにくい組織はメンバーの主体性を殺す

組織における「情報へのアクセスのしやすさ」とは、単純にいうと、組織の意思決定事項、そしてそこに至るまでのフロー、がどれだけメンバーにとってわかりやすい形で確認することができるか。ということに尽きる。

そういった「情報へのアクセシビリティ」に長けた組織にも、そうじゃない組織にも所属したことがある。 その差が何を生むのかというとそれは、メンバーの主体性の差である。 実際、その差によって意思決定の質などは特に変わらないと思う。ただし、そのプロセスが見えることで、メンバーは自分自身が関わる組織の意思決定であると捉えることができる。プロセスが見えないと「勝手に決まったことだ」ということで、意思決定に対する動き出しが遅くなる。

ただし、これは「情報へのアクセシビリティ」が不足している組織にしか所属したことがない人にとっては盲点になりやすいポイントだったりする。心当たりが少しでもある方は本書を読んでみると、その意義、具体的な方法論が手に取るようにわかるだろう。

心理的安全性が促進する「積極的な領空侵犯」

本書において「心理的安全性」という重要なキーワードがある。 今やこういった書籍を読む人には当たり前となったキーワードだ。 ただ単純に心理的な安全が確保されるだけでは、チームのアウトプットは最大化されないと私は思っている。 では何が必要か?そのヒントとなるキーワードが本書に隠されていた。それが積極的な領空侵犯というものだ。

以下引用(P.136)

もし、想定外のアイデアや、今までにないような企画を生み出すのであれば、効率性という考えからいったん距離を置くべきだと思います。特にメディアの場合、個人の縄張りを奪い合うのではなく、お互いに領空侵犯しながら仕事を進めたほうが、結果として面白いアウトプットが期待できます。

それぞれのメンバーが長期に所属し、「空気」で互いの意思がわかるような組織では上記のような考え方ではなく、役割分担をして後は放置して、報告だけし合えば良い。

ただしこれから組織はどんどん流動的になっていく。 ともに過ごす時間が短く、相互の能力をあまり知らないメンバー同士でアウトプットを生み出さないといけない組織が多くなる。その時、完全な役割分担ではなく、互いに干渉し合いながら、本書の言葉を借りると「領空侵犯しながら」アウトプットを出し合うということで、返って相互の潜在的・顕在的能力を知るきっかけになる。

それは自分自身が3社を経験しながら、強く感じていることでもある。個人のアウトプットの合計ではなく、組織が個人のアウトプットの掛け算でアウトプットできているチームはそういった相互の関係性が裏に必ずある。

ということで、チームビルディングや組織づくりに悩んでいる人は、手にとって読んでみてほしい一冊!