主体性と安心感を兼ね備えたチームビルディング教本
サイボウズ式編集長の藤村さんによる未来のチームの作り方。
《働きやすさ》を考える メディアが自ら実践する「未来のチーム」の作り方
- 作者: 藤村能光「サイボウズ式」編集長
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2019/06/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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少人数チームのリーダーによるリアルなマネジメント教本
世の中に「リーダーシップ」「マネジメント」を語る本は多く存在するが、 「はじめてマネージャーになる」「急にチームを持つことになったけどどうすればいいのかわからない」 といった人にとっては概論的すぎたり、悩む当事者の個性を無視してしまい、 リアルな場に落とし込まれていないケースが非常に多い。
しかし本書はサイボウズ式編集長となった当時の藤村さんが、どのように決意し、どのように壁に悩み、どのようにそれを乗り越えたか。その考え方からツールを利用した組織の在るべきの模索までが詳細に記されている。 少人数のチームを率いる多くのリーダーには学びになることが間違いない一冊。
以下、私が共感した部分を経験と交えて記載してみる。
3社を経験して気づく「情報のオープンさ」の重要性
私は社会人を5年目でありながら転職を2度経験している。既に3社も経験しているため、良い組織、悪い組織の特徴のようなものは肌で体感してきた。その中で「良いチームの共通点」と呼ぶべきものが、「組織内の情報へのアクセスのしやすさ」だと確信している。
情報にアクセスしにくい組織はメンバーの主体性を殺す
組織における「情報へのアクセスのしやすさ」とは、単純にいうと、組織の意思決定事項、そしてそこに至るまでのフロー、がどれだけメンバーにとってわかりやすい形で確認することができるか。ということに尽きる。
そういった「情報へのアクセシビリティ」に長けた組織にも、そうじゃない組織にも所属したことがある。 その差が何を生むのかというとそれは、メンバーの主体性の差である。 実際、その差によって意思決定の質などは特に変わらないと思う。ただし、そのプロセスが見えることで、メンバーは自分自身が関わる組織の意思決定であると捉えることができる。プロセスが見えないと「勝手に決まったことだ」ということで、意思決定に対する動き出しが遅くなる。
ただし、これは「情報へのアクセシビリティ」が不足している組織にしか所属したことがない人にとっては盲点になりやすいポイントだったりする。心当たりが少しでもある方は本書を読んでみると、その意義、具体的な方法論が手に取るようにわかるだろう。
心理的安全性が促進する「積極的な領空侵犯」
本書において「心理的安全性」という重要なキーワードがある。 今やこういった書籍を読む人には当たり前となったキーワードだ。 ただ単純に心理的な安全が確保されるだけでは、チームのアウトプットは最大化されないと私は思っている。 では何が必要か?そのヒントとなるキーワードが本書に隠されていた。それが積極的な領空侵犯というものだ。
以下引用(P.136)
もし、想定外のアイデアや、今までにないような企画を生み出すのであれば、効率性という考えからいったん距離を置くべきだと思います。特にメディアの場合、個人の縄張りを奪い合うのではなく、お互いに領空侵犯しながら仕事を進めたほうが、結果として面白いアウトプットが期待できます。
それぞれのメンバーが長期に所属し、「空気」で互いの意思がわかるような組織では上記のような考え方ではなく、役割分担をして後は放置して、報告だけし合えば良い。
ただしこれから組織はどんどん流動的になっていく。 ともに過ごす時間が短く、相互の能力をあまり知らないメンバー同士でアウトプットを生み出さないといけない組織が多くなる。その時、完全な役割分担ではなく、互いに干渉し合いながら、本書の言葉を借りると「領空侵犯しながら」アウトプットを出し合うということで、返って相互の潜在的・顕在的能力を知るきっかけになる。
それは自分自身が3社を経験しながら、強く感じていることでもある。個人のアウトプットの合計ではなく、組織が個人のアウトプットの掛け算でアウトプットできているチームはそういった相互の関係性が裏に必ずある。
ということで、チームビルディングや組織づくりに悩んでいる人は、手にとって読んでみてほしい一冊!
メモ:健康・予防領域で「稼ぐ」ためにーー成長領域なのに黒字化できない理由/『BCGが読む 経営の論点2019』より
下記より、予防領域の箇所を雑感的にメモ
ヘルスケア領域のカテゴリー分け
予防・未病 | 診断・治療 | 予後・リハビリ | 介護・終末期 | |
患者・生活者 | ||||
医療機関 | ||||
製薬企業・医療機器メーカー | ||||
保険者 |
上記の分類でいくと75事業が展開されているという。
米国ではIHN(統合ヘルスケアネットワーク)、ACO(Accountable Care. Organization)という仕組みで横軸4つの領域を展開するものがあるとのこと。
その代表的な企業が、カイザーパーマネンテである。
医療機関チェーンを傘下に持ち、支払い機能、医療プロバイダ、ペイヤー機能を統合している。医療に関するあらゆる機能を統合することで、経済合理性の高い最適な医療資源配分が可能になっている。
※日本はまだその段階まで規制緩和されていないため、参考事例としての共有
健康・予防領域で黒字化できない理由
簡単にいうと既存事業、技術にこだわりすぎてしまっている状態。自社のハードウェア、サービスありきに新しいビジネスを乗せようと考えすぎて、しまい、ユーザーの本当の行動変容に気づかず、成功しない。
かつ疾患になっていない状態で、お金を払い続けるのは世界的にも難しく、日本にいたっては、自己負担額が小さいためさらに難しい。予防に対するインセンティブが小さい状態で、患者の行動変容に繋げるサービスをつくることは生半可なことではない。
- 「お金が落ちる領域」を見極められない
「お金が落ちる領域」→医療の投資対効果が高い事業領域
→医療のアウトカムがどれだけ実現したかその比率が高い事業
※グローバルスタンダードでは増分費用タイ効果で400万円~400万円を切る必要がある
「大きなお金」→保険診療として認められて保険償還されるもの
つまり点数がつかないような医療投資対効果のない事業をやっても大きくならないということ。
例えば再生医療のような高度医療が進歩しても、費用が賄えなければ意味がない。これは医療以外の産業ではあたりまえの発想だが、医療となると日本では補助ありきの発想になってしまいがり。医療経済性は念頭に置いたほうがよい。
黒字化するために
- 患者の行動変革に繋げる
最終的な患者。生活者の思いを汲み取り、行動変革につなげること。米国の糖尿病予防はニーズが強いが、それらに関するサービスは軒並み収益化できなかった。ユーザーを律することができず、結局効果がないものと思われてしまい離脱者が増えた。
マスではなく本当にやる気のある人だけを抽出して、成功事例を作り、ブランドを造るというやり方が現在米国では行われている。
- 医療経済性の高い価値の提供
前述のように、社会的に医療経済性の高いものに投資をする必要がある。わかりやすさが重要。
予防医療収益化に必要な3つのレイヤー発想
第1レイヤー 健康状態 | 歩数 | 体重 | 食事 | 睡眠 |
第2レイヤー 中間状態 | 骨密度の低下 | 高血圧 | 物忘れ | |
第3レイヤー 疾患 | 骨折 | 糖尿病 | 認知症 |
第1レイヤー→第2レイヤー:因果関係が見えにくい
第2レイヤー→第3レイヤー:因果関係が見えやすい
いかに相関を見えやすくしてそれに対するソリューションをわかりやすく提供するかが重要。それにより行動変容がおこる。
以上、今後調べるものも含めて雑感メモとして記します。
真のプラットフォーマーの全貌を知る1冊―――成毛眞『amazon 世界最先端の戦略がわかる』ダイヤモンド
2018年8月に第1刷が出たにもかかわらず、既に第7刷。
小売(EC/リアル)・物流・金融・エンタメ・クラウドコンピューティング、、、今や全世界のあらゆる産業に猛威を奮っているAmazonのビジネスについてまとめた本。意外とAmaonの全貌をしる本はなかったので、「ネットの記事や新聞で読むけど、意外とAWSやAmazon Goのこととかわからない」、という人にはこれに勝る良書はないだろう。
意外と知らないことが多かった
普段からAmazon界隈の情報は目にはしていたので、既知の情報が多いだろうと思っていたが、新たに発見した事実がいくつかあったので下記にまとめておこう。
- FBA(fulfillment by amazon)
マーケットプレイスに出店する企業が出荷・決済・配送・返品対応まで担ってくれる仕組み。おそらく流通業界や、メーカーにいらっしゃる方からすれば、Amazonの基本の基本ではあるのだろうが、詳しくは知らなかった。FBAを使えばPrimeマークが商品につくことになる。
Amazonは顧客第一主義であることはよく語られるが(本書でも語られる)、まさにビジネスのプラットフォーマーとして参加者の困りごとをスケールメリットを生かして、解決していく姿勢は世界一だろう。それが1番現れているのがFBAだと感じる。
- amazon launchpad
FBAに紐付いているが、スタートアップ企業が、Amazonに商品開発から物流、資金調達まで支援してもらえる仕組み。
こちらに紐付いて、Amazon Lendingで実際の資金調達も可能
- Amazon Lending
事業者向けの少額短期融資の仕組み。審査が従来の銀行融資よりもスピーディ。なぜか、それはAmazonが融資先の売上データ、在庫データなどをすべて握っているから。いざとなったら在庫も差し押さえられる、損をしない驚異のビジネスモデル。
- amazon multi channel fulfillment
Amazon以外のECプラットフォーム(楽天など)で商品を販売した場合でも、Amazonが出荷などを代行してくれる仕組み。
筆者もあまり知られていないことと前置きしているが、これは1番驚いた。
- カスケード
- KIVA
Amazonの倉庫ではたらくロボット。
世界のプラットフォーマーという恐ろしい存在
GAFAの脅威が叫ばれて久しいが、改めてAmazonが以下に世界の中心となって輝くプラットフォームであるか、そしてその恐ろしさを思い知る一冊だった。
下記の紹介した『プラットフォームブランディング』の記事で「プラットフォーム=1つの接点から多くの価値を生み出すもの」という自分なりの定義から考えると、Amazonがいかにそれにこだわり抜いているかがよくわかった。
プラットフォームブランディングーー1つの接点でいかに多くの価値を生み出すかー - Time Is More Than Money
ECに関していえば、商品の書いてと売り手の接点になるが、それにいたるまでの、購買プロセス、出品プロセスの中で数えきれないほどの価値を作っている。
これを全世界、あらゆるジャンルの商品でやっているのだから恐ろしい。それも極力人力を排除する形で・・・。
そしてそれだけでなく、Prime会員に向けた圧倒的なコンテンツに加えて、AWSまである。
※AWSもクラウドコンピューティングのインフラの中であらゆる価値を提供しているプラットフォームだ
Amazonはこれで終わりではないしますます進化するだろう。これが世界のプラットフォームの完成形になったとき、社会は生き方はどうなるのか、、というのは現代人であれば少し考えていかなければ行けないし、逆にビジネスに携わる人にとってはAmazonという怪物の動向は機会にもなるし脅威にもなるため、ますます注視しておきたい存在だ。その足がかりとして本書は最良であると思う。
ちなみに私は圧倒的にヨドバシ・ドット・コム派だ。