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プラットフォームブランディングーー1つの接点でいかに多くの価値を生み出すかー

 最近話題の書を。

 

プラットフォーム ブランディング

プラットフォーム ブランディング

 

 グロービスで教員をされている川上 慎市郎さんとインサイトフォースの山口義宏さんの共著。

ブランドとは何か、プラットフォームとは何か、そしてどのようにそれらを作り、顧客体験を最大化させるか。そのエッセンスが詰まった書である。

 

本来であればすべて読破して飲み込んでからブログに書いてみたかったが、

一番最初に目を通した第三章の「体験価値を共創するプラットフォーム」という部分が非常によくまとまっていて面白かったのでその部分に限ってまとめてみたい。

 

プラットフォームとは

本書は2013年4月に初版が発行された本である。

2013年といえばだいぶ昔に聞こえるが、9月にiPhone5sや5cが発売された年といえば、少しは最近に感じるだろうか。

当時から「プラットフォーム」という言葉はビジネスの世界ではよく耳にしていたが、具体例で言うとまさにiPhoneiOSiTunesAmazonAmazon.com等を創造すればわかりやすいだろう。

本書では2つ定義付けしている

・定義1:複数の用途・仕様の製品をより低コストで開発・生産することを狙いとした技術的な共通基盤

・定義2:ユーザとユーザーのコミュニケーションを媒介することで価値を生み出す場

 

定義1はどちらかという自動車産業等の製造業でよく言及される「プラットフォーム」の定義に近い、定義2は事業と事業と繋がりの場を社会的に共有し、そこに様々な企業が三角し、価値を生み出す場としての「プラットフォーム」である。

※上記は慶應義塾大学の国頷氏の『オープン・アーキテクチャ戦略』の中で説かれている

本書では定義2の「プラットフォーム」に基づいて、プラットフォームの機能が書かれている。

 

そして本書のタイトルが『プラットフォームブランディング』となっているように、ブランドの「体験価値」を最大限に伝えるための手法として「プラットフォーム」が描かれている。

 

プラットフォームの機能

本書ではプラットフォームの機能を以下の2つに分類している。

①コミュニケーションの低コストでの媒介

「コミュニケーション」というとわかりにくいが、これは「特定のユーザーとユーザーによる情報のやりとり」と言ってしまったほうがわかりやすいかもしれない。

Amazon楽天であれば買う側の「発注」という情報、売り手の「受注」「納品」といった情報のやりとり。

プラットフォームを使えばその「接点」を統一できるため、低コストなコミュニケーションが実現可能となる

 

②相互ネットワーク効果による、売り手・買い手双方への価値創出

これもわかりにくいが、ひらたくいうと、「皆が同じプラットフォームを使うことで、買い手にも売り手にもメリットが出る」という話だ。

ECモールで言えば出店者が多ければ多いほど顧客はつくし、顧客は多ければ多いほど、出店者も増える。このような状態を相互ネットワークが築かれている状態と呼ぶ

ECモール以外だとLINEやInstagramのようなSNSも相互ネットワークが働いている。

皆が使っているからLINEですぐに誰とでも連絡を取れるし、誰かの近況をしることができる。

それをネットワーク外部性とも呼ぶがそれが作り出されたプラットフォームはユーザーとユーザーの価値をいつでもマッチングできる状態になる。

 

2点をまとめると、ユーザーとユーザーのニーズをマッチングさせ、統一された価値を生み出すために生み出された技術的な共通基盤がプラットフォームだと考える。

 

プラットフォーム化のための4ステップ

①生活者の感じている「大きな欠損・非効率」を発見する

②そこで感じている体験の価値を絞込み、最大化する

③体験価値を高めるためにパートナーを引き込む(=プラットフォーム化する)

④周辺領域へプラットフォームを拡大する

 

①・②に関してはプラットフォームに限った話ではなく、世の中に出すプロダクト一般的に言えることだ。

以下に顧客の困りごとを解決する価値を提供し、それを絞込み、最大化するということがプラットフォームにとっては重要であり不可欠な要素だという。

 

プラットフォーム特有の部分でいうと③・④のほうが重要だといえるだろう。

 

③体験価値を高めるためにパートナーを引き込む(=プラットフォーム化する)

ここがプラットフォームにとっては最も重要なポイントだろう。

プラットフォーム化するためにはそこに参加してくれるパートナーの存在が欠かせない。

 

④周辺領域へプラットフォームを拡大する

これはプラットフォームを作る上で一番むずかしい部分になりうる。

うまくパートナーを巻き込み、プラットフォーム上に価値を生み出してもらいながら、

プラットフォーム自体が拡大してその領域を担う必要がある。

それはプラットフォーム自体が常に「プラットフォームの包含」と呼ばれる、プラットフォーム自体が飲み込まれるというリスクと常に隣り合わせだからだ。

本書ではiOSが地図アプリを内省したことが結果的に良い選択だったということが書かれている。

 

まとめ プラットフォーム=相席屋?

詳しくは本書を読んでいただきたいが、私なりにまとめると

プラットフォーム=単一の接点で複数の価値を生み出すことのできる場所

だと思っている。

複数の価値というのは複数のニーズをマッチさせることだ。

1つの接点で1つの価値を生み出すだけではただの商取引である。

誰かが100円でパンを買っても、パンを売る側と買う側のニーズしか満たすことはできない。

 

そういう定義でいくと私なりに思いつくプラットフォームの例は「相席屋」だ。

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男性が30分1500円の食べ飲み放題(店によって違うらしい)で入店し、無料で食べ飲み放題をしている女性の席に同席するという仕組みである。

女性は飲み会前の0次会や単なる無銭飲食として利用ができ、男性は話し相手を見つけることができるニーズのマッチングの場だ。

これはプラットフォームの定義①および②を確実に満たしているだろう。

 

ただこれだけだと1つの接点におい1つの価値しか生み出せていないが、この「相席屋」の仕組みはプラットフォームになりうる可能性を秘めている。

例えば相席屋がカップルを生み出すプラットフォームと定義づければそれにまつわる様々なパートナー企業を巻き込むことができる。旅行の広告を出したり、相席屋の次の店を提案したり。

コミュニケーションのプラットフォームであれば、来場者を趣味や属性で絞れば、趣味の友達が欲しいというニーズも産めることができる。

 

このようにプラットフォームは多くの可能性を秘めている。

常日頃ビジネスの仕組み作りを考えている人にはおすすめの1冊だ。