『日本再興戦略』の意義を考える
NewsPicksアカデミアに1ヶ月だけ入会して送らてきたこちらの一冊。
経済メディアNewsPicksで度々取り上げられたり、『情熱大陸』に出演したりで、ビジネスパーソンにはおなじみになった落合陽一氏。
学者であり、アーティストであり、起業家もある彼が、日本がこれからの日本のグランドデザインを描いた一冊。
個人的には永久本棚入りの本ではなかったのだが、価値の高いポイントも多々あるので備忘録代わりにそのあたりをまとめて置こうと思う。メルカリで売れる前に。
ポイント地方への分権と教育のアップデート
本書の1章、2章の「欧米とは何か」「日本とは何か」という世界のタテヨコの俯瞰の後に、日本のこれからのグランドデザインが描かれている。
その中で重要だと思ったポイントは下記の2つ。
- 人口減少による教育への投資の重要性
- 地方への分権
「日本が人口減少の国である」「テクノロジーが進化している」この2つの事実は相性がよい。それだけ人に対して多くのコストがかけられる国になるということ。
また、これまでの成長時代の画一的な価値観をもった人材教育ではなく、多様な人材を生み出すこと、そしてそれを受け入れる土壌を作る地方への分権。
このあたりは長期的に日本を見ていく上で重要なポイントになると感じた。
一般的な意見にも見えるが、落合氏によるタテヨコの俯瞰と併せると俄然説得性が出てくる。
やはり将来、未来を予測、予想するには歴史のタテとヨコの俯瞰は重要。
なぜ11万部も売れているのか
落合氏が引用したTweetによると本書は11万部も売れており、ビジネス書としては売れ行き絶好調らしい。
発売5日で… 11万部… だと… 売れてるんじゃねーかこれ? https://t.co/CFh8laQ3Ld
— 落合陽一/Dr.YoichiOchiai (@ochyai) 2018年2月5日
正直読んだ感覚だとなぜ11万部売れているかはわからなかった。
普段からNewsPicks等で落合氏の主張や、テクノロジー関連の情報を収集している人にはそこまで新鮮な情報でなかったように思う。
ではなぜ売れているのか。
それは本書が「勇気を与える1冊」であるからだと思う。「日本の問題をひたすら発見する本」ではなく、「再興のための種(Seeds)」を各所に散りばめているからだと思う。
問題をひたすら発見して、経済的、社会的な解決策を呈示する本は多いが、本書はそういった客観的な社会分析による問題発見自体は少ない。
「中流メディアの功罪」「教育制度」「拝金主義敵価値観」など、大きな枠組みの中での日本の問題点はもちろん列挙しているが、主張が問題点から出発しているわけではない。
むしろ個人の主観、エピソードを抽象化した分析が多くそこに違和感を持つ方も多いかもしれない。
本書はそういった問題提示よりも、日本(東洋)の特異性、ソフトパワー、ブロックチェーン等の先端との相性のよさ、そういったポジティブな新しいアングルを呈示することに重きを置いている。
日々同じような問題に関する議論を様々なメディアで目の当たりにしているビジネスパーソンや、学生にとっては勇気が出る一冊になると思う。
歴史的な俯瞰と、テクノロジーへの知見、これらの組み合わせは個人の幸福にとっては重要になってくるポイントだと思うので、そういったアングルを手に入れたい方は手にとって見ても良いかもしれない。