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マクロ経済を動かすのも人間の意思決定――『ルワンダ中央銀行総裁日記』

通勤中にちびちび読んでいたが、様々な中断を経て、ようやく読破。

 

 

1965年にルワンダ中央銀行総裁として着任した服部正也氏の回想記。

1972年に刊行され未だに第3版が刷られるほどのベストセラーだ。

ルワンダといえば1990代にかけて起きたルワンダ内戦のイメージが大きい容保う方思うが本書に記載されているのはそれより以前のものだ。

1962年にルワンダが正式にベルギーから独立され、その3年後に服部氏が着任し、6年間国内経済の発展や、平価切下げ等の通貨政策、財政均衡に取り組んだ記録だ。

 

中央銀行の政策といえば、日本で考えれば、日銀による国債の売買、通貨の発行など、どれも無機質的なイメージをもってしまう人も多いだろう。

しかし本書に記されている克明な記録には、無機質な経済政策ではなく、日々の人間と人間のやりとり、誰の心を動かせば意思決定がなされるのかという仕組みづくりなど、非常にミクロな要因によってマクロ経済が動かかされているということがよくわかる。

 

その中でも、服部氏がルワンダカイバンダ大統領に通貨の切り下げで起こった事例をを説いた際のこの一節が気に入っている。

 第三の教訓は、経済は生き物であって、自律的な法則によって動いてはいるが、法則の基礎になっている条件が変われば、それに順応してゆくものであることです。経済は生き物であるという意味は、経済は人間活動であるということで、人間の行為で意思というものが最も重要なものなのです。平価の妥当な水準を計算することは必要ですが。仮にその計算に若干の誤差があっても、平価を維持する決心があれば、その決心自体が経済に順応反応を呼び起こすものなのです。

 

本書で面白いのは本当にゼロから経済政策を立てなおしている点だ。

そしてその政策立案のプロセスの中に

「現状把握」→「分析」→「立案」→「実行」というプロセスがわかりやすくなされているのが面白い。

そしてあらゆる経済政策は規制によってではなく、国民に「インセンティブをいかに与えるか」という考え方からなされている。

規制をして蓋をするのではなく、インセンティブを与える。

 

こうした「ゼロからの経済政策」を見ることができる本は本書以外には中々大だろう。

そしてマクロな経済をミクロに見ることができる本もすくない。

そういった点で本書は万人におすすめしたい一冊。

 

マクロ経済をミクロに見るという点ではこちらもおすすめ。

 

大君の通貨―幕末「円ドル」戦争 (文春文庫)

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